Ⅰ 法定後見
成年後見制度は高齢者の権利擁護のために平成12年4月介護保険と同時にスタートし、法定後見と任意後見があります。

法定後見は認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、家庭裁判所が、ご本人の権利や利益を守る成年後見人等(判断力の程度に応じて後見人、保佐人、補助人となります。)を選ぶことで、ご本人を支援する制度です。

また、家庭裁判所では成年後見人等が行った仕事の報告を受け必要な指導を行っています。
これを後見監督と言います。


• 成年後見人等にはどのような人が選任されているのでしょうか?

子、親族の他に弁護士、司法書士、社会福祉士などの法律.福祉の専門家の他、友人や知人などの第三者を後見人候補として申請することが可能です。ただし、原則として家裁がご本人の状況をふまえた上で選定しますので申立人の希望がそのまま通るとは限りません。

親族間で争いがある場合は弁護士等の第三者が選ばれることが多いようです。

※H21年の数値

30.9%
子以外の親族 32.6%
専門職を含む親族以外の第三者 36.5%


•  成年後見人等の仕事は…?

本人の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行うとともに、本人の財産を適正に管理していくことです。

具体的には

・本人のために医療、介護、福祉サービスなどの利用契約を結ぶこと
・本人の預貯金の出し入れや不動産の管理を行うこと

などが主な仕事になります。

※食事の世話などの実際の介護は一般に後見人の仕事に含まれません。
※家庭裁判所にその事務を報告するなどして家庭裁判所の指示を受けることになります。(後見監督)


• 後見開始審判の手続きはどのような流れで進むのでしょうか?

1.   申立準備

必要書類
1.申立書
2.成年後見用診断書.診断書別紙
3.本人の戸籍謄本
4.本人の戸籍附表または住民票
5.候補者戸籍附表または住民票(本籍地の記載のあるもの)
6.本人の登記されていないことの証明書
7.推定相続人に該当する親族の同意書
8.申立て事情説明書
9.本人に関する資料
 ・本人事情説明書、財産目録、親族関係図
 ・健康状態が分かる資料(コピー)
  精神障害者手帳、身体障害者手帳、療育手帳、要介護度が分かるもの
 ・不動産についての資料
  土地建物登記簿謄本.固定資産税評価証明書
 ・預貯金、投資信託、株式についての資料(コピー)
 ・通帳、残高証明書、預かり証、株式の残高報告書など
 ・生命保険、損害保険についての資料(コピー)
 ・負債についての資料(コピー)
 ・収入についての資料(コピー)
 ・支出についての資料(コピー)
 ・遺産に関する資料
 ・遺産目録、目録を証する資料、相続人関係図など

10.候補者事情説明書

11.収入印紙
 申立手数料800円分 1組
 登記手数料2600円分1組

12.郵便切手
成年後見申し立ての場合     3750円
保佐、補助開始の申し立ての場合 4750円

※申立て書類一式は家庭裁判所に用意されていますが、裁判所のホームページからもダウンロードできます。


.申立て

準備された書類すべてお持ちになり、管轄の裁判所にお問い合わせの上、持参または郵送してください。


3.調査

家裁調査官による面接(申立人、候補者、本人)
親族への照会(書面照会等)


4.鑑定

本人の判断能力について医学的に十分確認するために、医師による鑑定を行うことがあります。この場合鑑定料が必要になります。
※鑑定費用は医師によって1万円~10万円と幅があります。


5.後見.保佐.補助開始の審判

※併せて監督人を選任することがあります。


6.審判の確定

※候補者が審判の通知を受け取ってから15日で正式な後見人、保佐人、補助人になります。確定以前には後見人の仕事はできません。


7.登記

※東京法務局にて後見登記がなされます。この手続きは審判から1ヶ月程度かかります。この書類により後見人としての立場が証明されることになります。


8.財産目録の作成、裁判所への提出

9.後見.保佐.補助の開始

 

•  同居している家族がいれば成年後見制度を使う必要がないですか?

本人が契約の内容を理解することができない場合など、家族が代わって行うことが慣習として行われていますが、本人の契約締結の力がない場合には法的には本人と契約したことにならず、契約は成立しません。ですから本人に代わって法的に「本人として」契約ができる後見人が必要になります。昨今家族が勝手に預貯金を引出し、財産を処分するなど、本人の利益に反する「経済的虐待」が増加していることが背景にあります。また、グループホームや施設入所契約の際に後見人を求められることがあります。

 

• 施設入所を嫌がっていますが家族が後見人になることで入所させることができますか?

原則的にはできません。

成年後見制度はあくまで「契約行為の代行.支援」であり、「契約行為の委譲やはく奪」ではありませんから、後見人には「身上配慮義務」があり、本人の意向や利益に沿わない後見活動を行った場合には家裁の判断により解任されることがあります。

 

• 後見人等(法定後見)の報酬はどのようになっているのですか?

報酬請求がされた場合、家庭裁判所がご本人の財産状況、仕事の内容を勘案して、支払いできる範囲での額が決定されます。ご家族が後見人で報酬請求をしない場合は無報酬となります。お金がないのでこの制度が利用できないということにはありません。

 

成年後見制度について更に詳しくお知りになりたい場合にはお近くの家庭裁判所窓口にお問い合わせいただくか、当事務所にご相談ください。